海洋生物化学炭素循環モデルを用いた暁新世／始新世境界温暖化極大イベントにおける炭素循環変動の復元

摘要

暁新世／始新低温唆化イベント（Paleocene/Eocene thermal maximum: PETM）は，いまから約5500万年前（以下，55．OMa）に生じた急激な地球環境変動である（Zachos et al., 2001; Zachos et al., 2003）。 PETM時の海洋全域で，海水の炭素同位体比が，明瞭かつ急激（＜1万年）に負の方向へシフトしたこと（炭素同位体比の負異常；CarbonIsotopeExcursion，CIE）が，浮遊性および底牛有礼出の掛二記録されている（図1: Kennett and Stott, 1991）。 ほぼ即事期の陸上哺乳類の歯化石や古土壌などにもCIEが記録されており，陸上でも炭素剛立体比の急激な負異常が′じたことが分かっている（Koch et al., 1992; Koch et al., 1995; Cojan et al., 200; Magioncalda et al.,2004）。 また，浮遊性および底生有孔虫の酸素同位体比から，CIEとほほ同時に?漸羊の表層水および探層水の温度が急激に上昇したことが分かっている（Kennett and Stott, 1991; Tohmas etal., 1999; Zachos et al., 2003）.海洋の表層水温は，低緯度で1～5°C（Tomas et al., 1999; Zachos et al., 2003），高緯度では5～8°C（Kennett and Stott, 1991），また深層水温は4～5°C上昇したと推定されている（Kennett and Stott, 1991, Tomas et al., 1999）。 さらに，これらの急激な環境変動の開始と同時に，底生有孔虫の30～50％の種が絶滅したことが明らかになっている（Kaiho, 1994; Kaiho et al., 1996; Thomas and Shackleton, 1996）。