衝撃変形·高速変形のメカニズムと応用：超高速変形モデルについて

摘要

高速変形では「転位は役立たず」とする根拠は簡単で，転位が自分の歪み場を伴なって動く際，歪み場を移動させるのは材料中の波動の伝播で，その速度は1000m/sの桁の固体内の音速に他ならないからである．転位速度が音速に近づくと，周りの歪み場は当然運動方向に押し詰まり，歪みエネルギーは限りなく増す．結局音速を上限として，転位は高速変形に追随できなくなる．これは相対性理論におけるローレンツ短縮に類似するしかし，転位は航空機のように超音速運動をするかも知れず，一方，転位速度の上限は運動に対する摩擦力によっても生じ，それは音速以下かも知れない．高速変形で辷り転位が働かないならば，塑性変形を担う別の機構を考えなければならない．例えば，マルテンサイト変態，結晶粒界の流動，加速粒子の貫通など，変形を生じる他の機構も勘案し，高速変形のモデルを論じるのがこの解説の趣旨である．