ナチュラル·ステンレス·ダマスト包丁との出会い

摘要

シリアの首都ダマスカスを中心として，イスラム圏の王侯貴族や将軍の愛用したダマスカス鋼製の刀剣，それは十字軍の遠征により，ヨーロッパ人にも知られるようになった．その一部は現在ヨーロッパやアメリカの博物館で大切に所蔵されている．なぜか18世紀半ばから原産地のダマスカスでも生産されなくなり，いつか目にする事も困難になってしまった．このダマスカス刀剣の素材は後述する鍛接ダマスカス鋼製品と区別するためウーツ·ダマスカス鋼と呼ぶが，その復元は現在に至るまで，二百年間にわたって冶金学界のテーマとなっている．本稿は二種類のダマスカス鋼の説明，そしてヨーロッパの博物館に現存するクーツ·ダマスカス鋼製の刀剣を紹介し，さらに最近アメリカで行なわれたウーツ·ダマスカス鋼製ナイフの復元とウーツ·ダマスカス鋼刀剣が造られなくなった理由，そして当社で発見したステンレス·ダマスカス包丁に触れることにしたい．