各種強相関電子系における輸送現象および超伝導発現機構

摘要

近年の圧力実験技術の進歩によって，物性物理の世界は大変豊かで魅力的なものになった。15年はど前を思い返すと，重い電子系の超伝導体は両手で数えきれるほどであり，しかもそのほとhどはU系化合物に限定されていた。その後の，Ce系，U系重い電子系における超伝導発見のラッシュの背景には，精力的な新物質開発の進展に加えて圧力実験技術の進歩があった。また，近年凝縮系物理の主要テーマの一つと数えられる「量子臨界点の物理」は，圧力による臨界性の制御が可能となってから大きく発展した分野である。最近では圧力は，温度に次ぐ「示強変数」としての立場を確立したと思われる。本稿ではまず圧力下の測定が比較的容易な輸送現象に焦点を絞って，量子臨界点近傍の超伝導体が正常状態において示す異常輸送現象について議論する。次に最近の話題である，鉄砒素系超伝導体における超伝導発現機構について議論したい。