無水希土類塩化物メタノール溶液における希土類イオンに対するCl~-イオンの配位挙動の濃密依存性について

摘要

これまでに、非水溶液中での希土類錯体の生成が様々な手段により研究されている。 ところが、ガラス状態を含めた低温での非水溶液中での希土類イオンの錯体形成については、これまであまり調べられていないと言える。 我々は、これまでに希土類イオンの非水溶媒中における配位挙動を検討する目的から、無水希土類塩化物をアルコールに溶かした溶液について、一連のラマンスペクトル測定を室温とガラス状態で行った結果を報告してきた。その中で、無水HoCl_3メタノール溶液への添加塩効果（LiCl)について、非常に興味深い結果が得られた。 すなわち室温状態のHoCl_3溶液では、溶液中に存在するCl~-イオンの濃度が増加するにつれて、希土類イオンに配位している塩化物イオンの全対称伸縮振動バンド（ν_（Ln-Cl))の振動数が増加し、Ho~(3+)イオンに配位するCl~-イオンの数が少なくなるかのように見える奇妙な結果が得られた。 そこで本研究では、さらに希土類イオンの溶存状態について詳細に検討するために、イオン半径の異なる軽希土側と中希土側の希土無塩溶液についても同様な測定を行い、どのような濃度依存性が得られるのか調べた。 その結果、希土類イオンに対するCl~-イオンの配位挙動の濃度依存性は、希土類イオンの種類によって異なることが分かったのでここで報告する。