高温高圧水中におけるユウロピウム（III)の発光特性

摘要

高温高圧水溶液(水熱溶液）を用いる応用技術は、エネルギー、資源、環境、素材開発などの領域で大きく発展しつつある。 一方、基礎科学としては、超臨界領域を含む水熱溶液の構造と物性、そこでの酸化還元、加水分解など、基本的な構造·反応についてさえもまだ不明な部分が多く、非常に重要な課題として新しい展開が期待されている。 一般に、水熱溶液中における金属イオンの存在状態は、基準状態（298.15K，0.1MPa）における平衡定数の温度依存性を熱力学的に予測して判断するが、多くの錯体について完全な熱力学データが存在することはまれであり種々の近似法が必要となる。 また、それらの結果を評価するための水熱溶液中における実験データは乏しく、希土類元素についても例外ではない。 地球化学におけるフィールド研究から、水熱溶液中の希土類元素は予想よりもかなり動きやすいことが報告されているが、上記の理由により包括的な描像は明らかではない。 これまで、我々はランタノイド及びアクチノイドの溶存化学種や固液界面にあける吸着種の状態分析（スペシエーション）を目的として、時間分解レーザー誘起発光分光法（TRLFS）による水和状態の研究を行ってきた。 本研究では、TRLFSを用いて水熱溶液中におけるEu(III)の発光特性を測定し、そのスペシエーションへの可能性を検討した。