熱力学的相平衡物質移動モデルを用いたスラグ系セメントの硫酸塩膨張劣化メカニズムに関する研究

摘要

さまざまなコンクリートの劣化のうち，日本では，塩害，中性化，アルカリシリカ反応，凍害,疲労,硫酸劣化に対しては劣化事例も多く，また研究も進hでいるが，硫酸塩劣化に関する事例ほ少なく，その対策の一つとしてJISに耐硫酸塩ポルトランドセメントが規定されているが現実にはほとhど流通していない。図1に世界の酸性土壌の分布図を示した。酸性土壌は必ずしも硫酸塩土壌と一致するものではないが，硫酸塩土壌が主に海水の硫酸イオンが還元して生成したパイライトが再び酸化されて硫酸塩を生じた海生層によるものと，火山性によるものに大別され，これらはいずれも一般的には酸性を示す。硫酸塩が分布すると考えられる地域は欧州，北米，アフリカ，オセアニアなど，ほぼ世界各地に存在し,硫酸塩土壌は，例えば，東南アジアの穀倉地帯であるデルタの沖積層に高濃度の硫酸塩土壌が分布し，作物の栽培に影響を与えている。