<症例報告>血清抗VZV抗体価(EIA法)測定と抗ヘルぺスゥィルス療法の有用性が示唆された無疱渗性帯状疱渗(zoster sine herpete ： ZSH)の1例

摘要

65歳，女性。初診の4日前より右背部中央から右乳房下にかけて疼痛発現。その後，症 状が軽快しないため当院受診。疼痛を認めるも皮疹を認めず，帯状疱疼の皮疼出現の可能 性を考慮し，3日後に再診，経過観察とした。初診3日後，皮疼を認めないが疼痛が強く 不眠との患者の訴えから，水痘.帯状疱疼ゥィルス(varicella zoster virus ： VZV)の再活 性化を疑い，EIA法による血清抗VZV抗体価(VZV-IgG)を測定したところ，85.8と高値 を示した。初診7日後には疼痛VAS値(visual analogue scale) 100mmの非常に強い疼痛 を認めており，ペア血清を測定していないため確定診断には至らないが，患者に無疱疹性 帯状疱疹(zoster sine herpete ： ZSH)の可能性を説明したところ，本人の強い希望があ り，経口抗ヘルぺスウィルス薬による治療を開始した。ファムシクロビル(FCV) 500mg を1日3回およびメコバラミン500mugを1日3回，それぞれ2日分処方したどころ，翌日の 疼痛VAS値は70mmに低下し，疼痛の軽減を認めたため各薬剤を5日分追加処方した。 FCV 7日間内服終了時のVAS値は66mmであり，メコバラミンにて継続加療とした。その 後，疼痛VAS値は漸減し，FCV内服2力月後には11mm,約4力月半後には0 mmに至つ た。初診18日後のVZV-IgGは116.1であり，ペア血清は約1.4倍に上昇していた。本症例で は，VZV-IgG (EIA)が高値であったことと抗ヘルぺスウィルス療法による治療経過より， VZV再活性化によるZSHと診断された。ZSHが疑われる場合には，早期にVZV-IgGを測定 し，その結果を受けて，積極的に除痛効果の高い抗ヘルぺスウィルス薬による治療を開始 し，症状の変化を見ていくことが重要と考えられた。