尿細胞診におけるAIpha－methylacyl－CoA racemase（AMACR/P504S）の良悪性鑑別に関する有用性

摘要

近年，Alpha－methylacyl-CoA racemase（AMACR/P504S以下P504S）は前立腺における癌特異的マーカーとして注目されている．われわれは膀胱癌におけるP504Sの発現について免疫組織染色を用いて検索し，さらに細胞診標本への応用についても検討した．対象と方法：対象は当院で摘出された連続の74例の膀胱癌生検組織と10例の解剖例の正常膀胱組織を用いこれらのパラフィン包哩切片に杭P504S抗体を用いた免疫染色を行った．また，177例の尿細月包診スメ7についても組織と同様にその発現を勧察した．結果：P504Sは正常組織ではアンプレラ細胞に弱い発色が観察された．膀胱癌組織では74例中41例（55％）が陽性と判定され,再発例で有意に高発甥した（p＝0.033）．P504Sの発現は組織学的異型度と正相関した（p＝0?0023）.しかし，その発現は患者の性や年齢，また癌の深遠度とは関連がなかった．尿細胞診標本ではカテーテル尿,自然尿それぞれ50％（10例中5例），62％（47例中29例）の悪性細胞に反応が見られ，一方細胞診陰性例ではそれぞれ5％（22例中1例），1％（98例中1例）にのみ陽性になった．結論：P504Sは膀胱癌の特に再発例，高異型度例に多く発甥し，細胞診に応用した場合もその有用性が高いことがわかった．