抗原提示とgraft-versus-host disease (GVHD)

摘要

同種造血幹細胞移植は多くの造血系悪性疾患に対する 治癒的治療である。同種造血幹細胞移植が自家幹細胞移 植あるいは化学療法と比較して腫瘍再発率が明らかに低いことは, 移植片対腫瘍効果（Graft-versus-tumor effect, GVT 効果） によるもので, 移植片にもともと混入 していた成熟免疫細胞, あるいは前駆細胞から移植後に 再構築された免疫細胞が腫瘍細胞を攻撃するという一種? の免疫効果である。しかしながら, ドナー由来細胞はレ シピエン卜体内の腫瘍細胞のみを特異的にターゲットと せず, 正常組織をもしばしば攻撃してしまう。これが移 植片対宿主病（Graft-versus-host disease, GVHD)であ る。 GVHDは造血幹細胞移植後の重要な合併症のひ とつであり, 総じて15%の移植患者の移植関連死の原 因となるうえ, 著しく移植後の生活の質を損なう。