新修·意釈『東洞先生答問』（13）

摘要

四十歳許りの男子、陰莖が覚えず、常々心頭に疑しきことも之れ有り候故、後世医に右の趣を咄し候処、様子を承り候迄．にて、陰莖の形状も見ず、直に下疳の療治を仕り侯えども、元来下疳にて之れ無き故、何の相い替わり品も之れ無く、其の後大いに上逆し、肩が脹り、夫れより頭上、額、眼中まで火をあてる如く、又針を以って刺すが如く痛み侯由、其の上、左の鼻中が昼夜幾度と申すことなく塞り、鼻声に成り申し侯、腹侯の処は、大いに脹、動も御座候、桂枝加葛根湯に応鐘を兼用、紫円も多用し候処、大半治り申し候、然る処、頃日は心下に食餌が滞り候様に覚え、不快に御座候、頭上、額、眼中の痛みも至って軽く相い成り候えども、未だ全快仕らず、鼻中も同じ事に御座候、陰莖、陰嚢ともに折々、或いは痛み侯様にも覚え、或いは痒く御座候由、右の趣に付きて、又々腹診の処は、強きことには之れ無き候えども、左右が苦満の気味にて、臍上の動は余程強く相い成り申し侯、唯今にては、全く柴胡姜桂湯の症と相い見申し候、如何仕るべきや。小柴胡加桂枝湯を五両か、又は桂枝加朮附湯か、両湯の内、是が療治。