前置癒着胎盤症例におけるCesarean hysterectomy中の術中出血量減少を目的とした内腸骨動脈結紮術の限界

摘要

【目的】前回帝切前置癒着胎盤症例に対しCesarean hysterectomy中の出血量減少を目的に行われる内腸骨動脈結紮術の効果についての評価を行った.【方法】1987年から2006年までの20年間に埼玉医科大学総合医療センターで前回帝切前置癒着胎盤症例に施行されたCesarean hysterectomy症例を後方視的に検討した.検討内容として内腸骨動脈結紮術施行患者と非施行患者の転帰を出血量と術後の入院期間で比較した.また，内腸骨動脈結紮術施行患者の出血量を癒着胎盤の種類ごとに解析し，病理所見の違いがCesarean hysterectomy中の出血量に影響するか調べた.【結果】前置癒着胎盤症例23例(癒着胎盤4例，嵌入胎盤12例，穿通胎盤7例）中15例に内腸骨動脈結紮術が施行された.内腸骨動脈結紮術施行の有無により術中出血量および術後の入院期間に有意な差を認めなかった.また内腸骨動脈結紮術施行症例において病理所見の違いはCesarean hysterectomy中の平均出血量に影響を与えなかつた.【結論】内腸骨動脈結紮術は前置癒着胎盤症例におけるCesarean hysterectomy中の出血量の減少に有意に寄与しなかった.