肝膿瘍を契機に発見された肝細胞癌の1例

摘要

肝膿瘍の治療の経過中に肝細胞癌が診断された一例を経験した.症例は73歳男性.入院 10日前に右上腹部痛が出現し，腹部ェコ一で肝左葉外側区の腫瘤を指摘され当院入院となった. 造影CTで肝左葉に径6 cmの囊胞状の低吸収域と辺縁の濃染を認め，発熱と炎症反応を伴つて おり肝膿瘍と診断した.針生検でも膿瘍の所見であり，培養で複数の腸内細菌力s検出された. 抗生剤治療で症状は改善したが，腫瘍径は4cmからの縮小がみられず，造影CTで低吸収域が 肝外性に増大したため，肝外側区域切除術と胆囊摘出術を施行した.術後標本で4.5x3.0 cm の膿瘍の内部に径2.4 cmの中分化型肝細胞癌を認めた.肝膿瘍を契機として発見された肝細胞 癌の報告は散見されており，肝膿瘍の治療において，悪性腫瘍合併の可能性を考慮した経過観察の重要性が示唆された.