幼虫移行症を証明しえなかった肝好酸球性肉芽腫症の1例

摘要

症例は39才，男性で背部痛を主訴に来院した.ぺット飼育歴があるが，鮮魚以外の生肉 食歴はない.精査で肝S7に1.5 cmの腫瘤を認め，末梢好酸球，IgEは高値を示し，WBC，蝈 虫およびァニサキス抗体は軽度高値を示した.画像上腫瘤中央は乏血で，軽度周辺に動脈血流 の增生を認めた.上部下部消化管内視鏡検査に異常はなかった.炎症性偽腫瘍ないし好酸球性 肉芽腫を疑ったが確定診断がつかず，腹腔鏡下肝部分切除を施行した.病理検査で好酸球性肉 芽腫であつたが，腫瘍内には虫卵，虫体は認めなかった.術4力月後現在，再発は認めていな い.好酸球性肉芽腫はI型アレルギー反応の一型であり，いずれの臓器にも発症しうる.肝の好 酸球性肉芽腫はィヌ?ネコ回虫などの寄生虫の内臓幼虫移行症が殆どであるが，虫卵?虫体の 証明できない例や，まれに他の原因の好酸球性肉芽腫も報告されており，今後も詳細な問診や 検査を行つた症例の蓄積が必要と考えられた.