競技スポーツ選手の精神医学的問題

摘要

今日スポーツは記録·勝利至上主義に傾き,競技環境がストレスに満ちている。このような環境下で精神医学的な問題を呈した競技選手6症例を報告した。その特徴として,①一般臨床診断以外に人格的な問題が併記される例が多く,競技環境が人格形成に影響を与えることが考えられた,②父親との心理的結びつきが希薄で,父親的権威の前に一方的に威圧され,衝突を回避する形で競技に自己投入し,競技を通じて「男性性の確立」を達成しようとする姿がうかがわれた,③競技を通して同一性を形成しているため,選手としての役割が遂行できなくなったときに深刻な危機に陥っていた,④指導者や競争原理に支配され,勝利目的に攻撃·敵対的態度を強制されているため,現実感が希薄化し,情緒的刺激に対する感情·意志面での制御が十分機能しない傾向がみられた,⑤社会で困難な状況やストレス下に曝され,対処行動の失敗の結果として,精神症状や逸脱行為が生じるものと考えられた。