核不拡散と保障措置の現状、課題、将来展望

摘要

核不拡散体制は国際政治の状況に影響され変化しており、核不拡散の実施と検証である国際保障措置も変化を余儀なくされる。最近の核不拡散情勢の動向と保障措置体制の現状を検証し、その課題と今後の展望に関して考察してみたい。核不拡散条約（NPT）は、一九七〇年に発効し二〇一六年には一九一か国の締結があり、国際条約としては国連憲章に次ぐ多数の国の承認を得ている。このことは核兵器とその拡散に対する国際社会の強い関心と懸念を示すものと言える。周知のように、核不拡散条約は柱となる三項目から成っている：核不拡散の義務（第三条）、平和利用の権利と利益の享受（第四条、五条）、核軍縮交渉の義務（第六条）。さらに、第三条四項においてIAEA（国際原子力機関）と保障措置協定の締結義務（一八か月以内）を課している。罰則事項のないこともあって、この締結義務の履行が必ずしも実施されず保障措置上の課題となっている。