HClを含む高温湿潤ガス環境におけるステンレス鋼およびNi基合金の腐食に及ぼす酸化物および塩化物の影響

摘要

160～200°C前後のHCl，O_2及びH_2O混合ガス中におけるステンレス鋼（SUS304L，SUS310S）およびハステロイ合金（C276）の伝熱面の腐食挙動を調べるともに，熱力学的考察により腐食メカニズムを検討した結果，次のことが結論づけられた。 （1）ステンレス鋼の腐食速度は，ハステロイ合金のそれより，極めて大きく，温度が高いほど低下する。 （2）ステンレス鋼の腐食は，Feのオキシクロリネーション反応により進行し，腐食生成物としてFeCl_2，Fe_2O_3を経てFeCl_3が最終的に生成する。 これら化合物の生成は，熱力学的に合理的に説明できる。 （3）FeCl_3は，露点よりも90°C高い温度以下または熱力学的にFeCl_3が安定な領域において，ガス中のH_2Oを吸収し，吸湿·溶解する。これが，HCl酸性湿式腐食環境を形成し，ステンレス鋼の腐食を促進する。 上述のステンレス鋼の腐食速度の温度依存性は，FeCl_3の溶解速度が，温度が低いほど大きいためと理解できる。 （4）ステンレス鋼表面上では，HClが特異的に吸着して塩化物が濃縮しやすく，比較的低温では酸化物安定相を形成することにより防食するのは，難しい。