「腐食事故」と「建築設備配管の腐食防止技術の変遷」に思う

摘要

先日，発電所の二次側冷却水配管系において事故が発生した。 最初10mmあった炭素鋼製復水管の肉厚が，28年間で最小0.6mmに減肉しており，事故の原因は腐食によると見られている。 直径56cmの配管が最大で約57cm幅にわたってめくれるように破裂し，10気圧·142°Cの冷却水800トンが蒸気とともに噴出して，約2分のうちに室内に充満し，今回の事故につながった。破裂部の約50cm上流側には配管継手があり，流量計測のためオリフィス流量計が組み込まれ，配管の内径は約34cmに狭まっていた。 このため，配管内部で縮流が生じ，流れが解放された下流側では管壁に沿って渦流が生じていたと考えられる。 すなわち，エロージョン·コロージョンによって想定以上のスピードで肉厚が減ったことが破裂の原因との見方が強まっている。 たまたま勤務先は夏休みに入ったばかりであったが，このことは腐食防食に携る者として，正に身の引き締まるようなニュースであった。 ニュースや新聞では，各機関の有識者が専門の立場から腐食の原因について見解を述べていた。 こうした事故のたびにいつも思うことであるが，皮肉にも「このような事態において，初めて腐食屋としてその存在価値が認められる」という実感がある。