調光ミラーガラス－新しい省エネルギー窓ガラス

摘要

「調光ミラー」とは，鏡の状態と透明な状態がスイッチングできる材料で，これを建物や乗り物の窓ガラスに用いることにより，太陽光を効果的に遮蔽することで，空調に必要なエネルギーを大幅に節約することができる．本誌通巻173号の「サステナブル建築材料」特集でも，調光ミラー関する概説を行ったが，その後産総研では，建物用の調光ミラー材料としてより適した新しい材料を開発することに成功した．本稿では，この新しい調光ミラーガラスについて紹介する．我々の研究グループでは，これまで調光ミラーガラスに用いる薄膜材料として，マグネシウム·ニッケル合金を用いたものを中心に研究を進めてきた．調光ミラー特性を示す材料としては，他に希土類金属を含むものが知られているが，これらに比べ，マグネシウム·ニッケル合金系の材料は，価格や安定性の面で勝っているからである．調光ミラー薄膜は水素を含む雰囲気に接すると水素化が起こって金属から透明な状態に変化し，酸素を含む雰囲気に接すると脱水素化が起こって透明から金属に変化する．マグネシウム·ニッケル合金を用いた調光ミラーでは，透明に変化した際の透過率はマグネシウム·ニッケル合金の組成比に大きく依存し，ニッケルに対するマグネシウムの比率が1:6程度の時に最も高くなる．