ブラジル政治·社会の構造変化を読み解く

摘要

ブラジルは豊富で多様な資源を有しながらも、政治·経済的な混乱や深刻な社会問題のため、“永遠に未来の大国”と揶揄されたこともある。しかし1980年代以降、政治、経済、社会の制度構築を進め、国家として発展するための持続可能性を高めてきた。本稿では、変貌を遂げた近年のブラジルについて、政治と社会に関する構造変化を概観する。政治に関しては、「市民の政治参加」という観点から「審議会」と呼ばれる参加型行政制度を事例に、与党労働者党や現在のブラジル政治との関連を概括する。また社会に関しては、「排除された人々の社会保障」という観点から貧困高齢者と普遍主義的政策を取り上げ、公共政策の転換点やルセフ政権の一特徴について概説する。