変圧器用途への開閉極位相制御システムの適用

摘要

無負荷変圧器の励磁投入時には，変圧器鉄心の磁気飽和特性に起因して，定格電流の数倍もの励磁突入電流が流れることが知られている。 この電流によって系統電圧が変動するため，需要家の機器動作への影響や近傍電気所の保護継電器の不要動作が発生する可能性がある。 一方，最近のパワーエレクトロニクス応用機器や電子機器などの電源電圧の変動に敏感な負荷機器が急増していることから，励磁突入電流による電圧変動を抑制することは，電力品質を維持·向上する上での重要な課題である。 このような励磁突入電流の抑制は従来から抵抗投入方式遮断器の採用などによって行われてきたが，電力機器制御の電子化と遮断器の動作信頼性の向上に伴い，遮断器をある特定の位相で開閉する開閉極位相制御システム(CSS)の適用によって励磁突入電流の抑制が可能となってきた。 これまで変圧器鉄心の残留磁束を考慮しない位相制御投入が行われてきたが，通常，無負荷変圧器回路を遮断すると，定格磁束の数十％程度の残留磁束が残る。 残留磁束を考慮しない位相制御投入では，励磁突入電流を，位相制御投入を適用しない場合の約60％程度にしか低減できなかったが，残留磁束を考慮した位相制御投入を行うことによって，その値は10～15％程度に抑制できる。 三菱電機は，世界に先駆け，残留磁束を考慮した開閉極位相制御装置を開発し，実フィールドに適用した。 その結果，従来の位相制御を適用しない場合に発生する数千Aに達する励磁突入電流と10％を超える電圧変動が大幅に抑制できていることを確認した。