開閉極位相制御技術の現状と将来動向

摘要

電力の自由化·規制緩和の進展，地球環境問題への意識の高まり，IT化を始めとする新しい技術の適用により，電力流通システムを取り巻く環境は大きく変貌（へhぼう）を遂げ，電力流通システムのライフサイクルコスト低減がより重要視されている。 また，変電設備に対するニーズも大きく様変わりして，電力市場の競争激化に対応した変電機器のコストパフォーマンスに対する関心が高まってきている。 このような変化に対応して，電力流通システムの中で重要な役割を担っている変電機器の開発·研究の主題が1980年代後半ごろから“機器の大容量化·性能向上”から“システム信頼性の向上及び保守の最適化”に移行してきた。 特に，デジタル制御，位相制御及び監視診断技術が実用レベルとなり，CIGRE（国際大電力システム会議）において，開閉極位相制御及び変電機器の信頼性·保守方法の実態調査や見直し議論が実施された。 1990年代後半になると，“開閉変電機器の寿命延長”及び“ライフサイクルコスト低減”の市場要求が強まり，変電機器の“コンパクト化”“高信頼性”“低操作力”に主眼を置いた研究開発が進み，日本では550kV 1点切り遮断器やUHV (Ultra High Voltage)開閉装置（2点切り）が製品化された。開閉極位相制御方式は，遮断器の投入抵抗に代わり，開閉サージを抑制できる経済的な手段として，1990年代後半から欧米を中心に急速に普及が拡大し，海外における電力用コンデンサ及び分路リアクトル用途の遮断器は位相制御が仕様化される事例が多くなっている。 また，電源の開閉動作時における電力品質確保の重要性が高まり，変圧器の残留磁束を考慮した位相制御投入も実用化され，頻繁な開閉が行われる発電所近傍の開閉機器への適用が増加している。 開閉極位相制御システムに関する試験方法を規定する国際規格(IEC62271-302)の制定により，既存開閉機器への適用基準も明確になり，開閉極位相制御方式の普及が更に増加するものと思われる。