HTV：宇宙ステーション補給機－対有人アビオニクスシステム

摘要

2007年度のH－IIA増強型による打ち上げを目標に，宇宙ステーション補給機(HTV: H－Ⅱ Transfer Vehicle)の開発が進められている。 HTVは，国際宇宙ステーション(ISS)への補給物資輸送（最大6トン）を目的とする無人宇宙機であり，種子島宇宙センターから打ち上げ後，軌道傾斜角51.6°，高度350～460kmを飛行するISSへの自動接近飛行（ランデブ）を行う。 ISS近傍，数十kmに到達後，ISSを管轄する米国航空宇宙局(NASA)との共同運用を開始し，ISS下方側から最終接近を実施する。 HTVはISS下方約10m点で停止し，宇宙飛行士の操作するロボットアームにより捕獲され，ISS上に係留される。 約2週間のISS係留後，HTVは再度ロボットアームによりリリースされ，大気圏再突入により廃棄される。 HTVはフライトセグメント（軌道上部分），グランドセグメント（地上運用設備），ISS セグメント（JEM搭載機器）から構成され，フライトセグメントはキャリア，アビオニクスシステム，推進系から構成される。 三菱電機は，宇宙開発事業団（NASDA）の指導によりHTVのアビオニクスシステム，グランドセグメント，及びISSセグメントの開発を行っている。 HTVのアビオニクスシステムは1997年に打ち上げられた技術試験衛星Ⅶ型(ETS－Ⅶ)ランデブ·ドッキングシステム（NASDA指導の下，当社が開発·運用）を原型とするが，有人宇宙システムであるISSへの接近·係留をそのミッションとすることから，対有人宇宙機システム固有のアビオニクスシステム設計上，軌道設計上の安全要求，設計要求が課せられている。 本稿では，HTVアビオニクスシステムの概要とともに，対有人システムとしての安全·設計上の諸要求，具体的な設計事例を紹介する。