昭和中期ごろまでのスギ、ヒノ牛丸太材の生産と搬出方法の言己録（中）－和歌山県西牟婁郡旧日置川田丁城川流域－

摘要

木馬道は水平を限度として下り勾配に設置する（国④）。 谷沿いの地形は特に傾斜の緩い所や，あるいは急な所など変化が多い。木馬道の架設では，地形の変更に少しでも手を加えることは許されないので，地形そのものに応じて木馬道の構造を変えながら組み立てていく。 したがって設計図も図面もないので，ここでも経験と「カン」がものをいう。 傾斜の急な所では材質の軟らかいスギの丸太をパン木として使用し，水平またはそれに近い場所では図⑤にもあるように，「力ラパン」式木馬道を取り入れパン木には堅い材質の木を使うなど，摩擦を大きくしたり，あるいは小さくしたりして，木馬の運行が容易になるよう，いろいろと工夫を加えた。