深水栽培による高品質米生産技術一深水処理の水深と期間および植付深が水稲の収量、品質に及ぼす影響

摘要

近年の気候温暖化で水稲の登熟期間中の気温が上昇し，白未熟粒の多発による品質低下が問題となっている. 深水栽培は白未熟粒の発生抑制に有効であるカ气効果の大きい水深18 cmの深水栽培が可能な圃場は限られる.そこ で，高温登熟耐性が弱の初星と中程度のコシヒカリを用いて，慣行栽培と水深18 cmの強深水栽培に加えて，深水栽 培と同様に分げつ発生を抑制する深植（植付深6cm)と，比較的水深が浅い弱深水栽培（水深10cm)，および両者 の組み合わせについて，水稲の生育と収量，品質に及ぼす影響を比較'検討した.その結果，初星では，深植した水 稲に活着期から最高分げつ期にかけて水深10 cmの深水栽培を行うと，白未熟粒の発生が減少し，水深18 cmの深水 栽培でみられた減収傾向はなく，収量が安定的に確保された.コシヒカリでは，水深18 cmの深水栽培をしても，有 意に収量は低下せず，この栽培条件で品質が最も高かった.また，コシヒカリでも，深植水稲の水深10 cmの深水栽 培では，有意な収量低下がなく， 水深18 cmの深水処理に次いで白未熟粒割合も低くなつた.深水栽培により，土壌 の酸化還元電位力氐下した力，登熟期の根系の機能に悪影響はみられなかった.深水栽培により明確な地耐力の低下 はみられなかったことから，収穫時の機械作業に支障をきたす可能性は低いと考えられた.