タマネギ（Allium cepa）から分離されたIris yellow spot virus（IYSV）の遺伝的特性およびIYSV2系統のタマネギおよびネギ（Allium schoenoprasum）に対する病原性

摘要

2001年に千葉県，2002年に佐賀県で相次いでタマネギ（Allium cepa）の菓身に紡錘型のえそ輪紋やえそ条斑等の病徴を示す株が見つかり，病微からIris yellow spot virus（IYSV）の感染が示唆された．IYSVほオランダでダッチアイリス（Iris hollandica）から最初に分離されたトスボウイルスであるが（Cortes et al．，1998），イスラエル（Gera et al．，1998），ブラジル（Pozzer et al., 1999），オーストラリア（Coutts et al., 2003）などでタマネギへの感染が報告されている．ブラジルで発生したIYSVBR（Pozzer et al., 1999）ほオランダで発生したIYSVNL（Cortes et al., 1998）と比較して，ヌクレオキャプシド（N）タンパク質のアミノ酸配列の相同性が約90％であること，宿主範囲が若干異なることから，異なる系統に位置づけられている［IYSV株の表記はPozzer et al. （1999）に従った］．日本では，これまでに佐賀県と静岡県のトルコギキョウ（Eustoma russellianum, synonym Eustoma grandiflorum）でIYSVの発生が確認され，トルコギキョウえそ輪紋病と命名されている（土井ほか，2003）．興味深いことに，日本のトルコギキョウからは，ⅣSVBRに相同性が高い株とIYSVNLに相同性が高い株が分離されており，系統の異なるIYSVが同一国内で発生していることが明らかとなっている（土井はか，2003）。