標識放流実験に基づくコブシメふ化放流効果の検討

摘要

コブシメSepia latimanusは，外套長50cm，体重10～12kgに達する大型のコウイカ類で，奄美諸島以南の西部太平洋からインド洋のサンゴ礁域に広く分布し，重要な漁業資源となっている。 1）本邦の南西諸島においても，本種はもり突きや小型定置網の主要な漁獲物であり，沖縄県では年間100トン程度が漁獲されている02）親日本栽培漁業協会八重山事業場（現，㈱水産総合研究センター八重山栽培技術開発センター）でほ，1987年から種苗放流によるコブシメの資源増殖に関する技術開発を実施してきた。 その結果，天然の親イカから水槽内で大量に採卵する技術，3，4）および卵を管理しふ化イカを得る技術4ぷを確立した0本種は典型的な大卵少産型の繁殖特性を示し，ふ化イカは外套長11～15mm6）で一般的な海産魚類や海産無脊椎動物のふ化幼生に比較して大きく，また，カモフラージュ7）や描食行動において成体と同様の生態を具備していることから，8）ふ化から漁獲加入までの生残率は比較的高いことが想定される。 9）そこで，我々はこのような本種の繁殖特性に基づいた増殖技術開発を推進するため，1992年からふ化イカ放流による資源添加技術開発に着手した。