魚類筋肉タンパク質の構造安定性に関する生化学的研究－サメ頬筋原線経タンパク質の尿素抵抗性－（平成16年度日本水産学会賞進歩賞受賞）

摘要

魚類は哺乳動物の体温より，一般的に低い温度環境に生息しており，構成タンパク質は低温でも機能を発揮する必要がある。 そのためタンパク質の構造は安定性を犠牲にして柔軟性を維持しているとされる。 魚肉タンパク質の構造のこのような不安定さは貯蔵、加工適性に影響を及ばすが，構造安定性に関する分子機構の研究はその途上にある。 筆者らは魚肉タンパク質中の過半を占める筋原線経タンパク質，その中でも主要成分のミオシンを主対象に，構造安定性に関する種々の生化学的研究を行った。 本研究はとくに，タンパク質の変性剤とされる尿素を高濃度に含むサメ類からミオシンなどを単離して構造特性を調べ，尿素を含まない硬骨魚などのミオシンと比較しつつ，サメ類筋肉の尿素抵抗性の分子機構の解明に取り組hだもので，その概要は以下の通りである。