野生動物の被害管理と行動制御

摘要

わが国での野生動物による農作物被害額は，鳥獣合計で200億円前後を推移し，減少する気配が見られない（Fig．1）。以前に筆者ら（亀井，2006）が農家を対象に実施したアンケート調査によれば，被害対策をしているにもかかわらず，被害を続けて受けている農家は，有効回答334戸中，210戸（約63％）にも上った。このことば，野生動物の行動生態を十分理解せず，誤った情報下での対策実施を意味していると考えられる。また，これまでの農業生産の技術体系において，昆虫による被害は想定されていたものの，野生動物による被害を前提とした作付け体系が構築されなかったことも，野生動物による農作物被害拡大の一因であると指摘されている（井上，2006）。