針葉樹林、広葉樹林における細根生産とその菌根化の季節変動－イングロース法による推定の試み－

摘要

森林地下生態系において、樹木の細根は炭素の動態や生物群集の挙動に大きな影響を与えるとされているが、細根自体の動態には未だ不明点が多い。 野外において板量や根の動態、菌根化のプロセス等を推定する手法としてコアサンプリング法、リゾスコープ法、観察窓法などが用いられているが、イングロース法も同様の目的で用いられる手法のーつで、根が侵入できるように網で覆った界面を持つ容終に板を含まない土壌を詰め、それを一定期間林地に埋めて侵入した根量から根の生産力を推定するものである。 イングロース法は特別な設備や機器を必要とせず、簡便に根の動態を把握できる反面、詰める土壌の種類によって侵入する根量が影響される恐れがあり、また深い土壌への埋設，回収が難しい等の欠点もある。 しかし、確実にオフセットされた状態から根の生産，枯死とその菌根化のプロセスを追うことができる利点は捨てがたい。そこで本研究では、タイプの異なる4種類の林分で細根生産とその菌根化の季節変動をイングロース法で把握できるかどうかを試みた。