日本のコムギ種子貯蔵タンパク質 - グルテニン遺伝子の遺伝変異とわが国における今後のコムギ品種改良

摘要

わが国の小麦作をめぐる農業情勢は，その経営規模がアメリカ - オーストラリア等の主要な小麦生産国と比べて過小である上に，生産資材や労賃が高価なため，生産性の向上による生産コストの低減には限界があり，大変厳し．い状況であると言わざるをえない。 そこで，コムギの品種改良を進める上で，国産コムギの品質向上と成分改良により，国民のニーズと嗜好に合う高品質コムギ品種を育成し国産コムギの付加価値を高めることが重要である。 第二次世界大戦後，穀物の食糧事情が改善されるまでは，収量や環境耐性などの栽培特性の改良に重点が置かれてきたが，食糧事情が改善され食生活の高度化と多様化が急速に進展する中で，コムギの育種目標の重点は，収量や環境耐性から品質や成分の改良に大きくシフトしてきている。 しかし，品質改善を図る上で，必ずしも充分な成果を収めることができない理由として以下の3点が指摘されている。