続 - 近代稲作における冷害技術の成長過程

摘要

稲の冷水害とは，冷たい用水（夏季の日中水温が20°C以下）を灌溉するために起る稲の生育不良と，出穂の遅れに伴う不稔および登熟障害の総体を現わす言葉である。 それは，主に生育の遅れとして稲が反応する場合が多いので，遅遅型冷害の一種というとらえ方もある。 また，冷水田については，戦前から「山間地方で沢水のような湧水を灌溉している水田」といった，きわめて漠然とした表現で理解され，ごく限られた地域の特殊な水田として扱われていた。 しかし，第2次大戦後，食糧増産を至上命題とするに及hで，毎年常習的に減収する冷水田の存在も無視できなくなった。 昭和28年（1953）の冷害は，そうした冷水地帯において被害が特に大きかった事から，冷水害は研究者の間でも注目されるようになった。