山下一仁著『国民と消費者重視の農政改革－WTo、FTA時代を生き抜く農業戦略』

摘要

著者の山下一仁氏は、つい最近まで農水省で、国内外の重要農政課題を担当してきた若手のエリート官僚である。 現在は経済産業研究所の上席研究員として勤務しているが、これまで、農水省内においていくつか勉強会を組織し、種々の研究所の研究会で積極的に政策提言的報告を繰り返している。 著者の農政改革提言に貫いている発想は、国際経済学の理論に反した農政は望ましくないということである。 著者は、国際経済学の理論を次のように正確に理解している。 「国際経済学が貿易の利益という時、それは輸出、生産の利益を指すのではなく、輸入、消費の利益を指すこと」。 このように理解すれば「モノの消費も良好な環境の消費もどの財をどれだけ選好するかという問題になる。 すなわち、（貿易と環境の）　 両者は対立するものではなく、消費者という同一の意思決定主体がおこなうものとなり、両者を統一的にとらえ」られる。