耐性菌を出さない抗菌剤使用の理論

摘要

耐性菌を出さずに抗菌薬を使うにはどうしたらよいかについて，世紀をまたいで2つの理論が出された。PK/PDパ ラメ一タ一注1)理論とMSW (Mutant Selection Window) 理論である。前者は耐性菌を出さないように抗菌薬を効率 よく使うための理論で，すでに獣医界でも投与剤形や投与 計,法の面で活用されている。後者は耐性菌株選抜を起こ させないための理論である。動物由来の耐性菌が社会問題 になり獣医師の責任が問われている現在，我々はこれら の理論は十分に心得ておかなければならない。本稿では理 論を解説し，臨床現場での活用についてコメントする。抗菌薬のPDは長く最小発育阻止濃度（MIC)で代表さ れてきた。しかしMICは試験管内の指標で，抗菌薬の臨 床効果に直接につながるものではない。「MICが低いから よく効く」といういい方は正しくない。MICは試験管内 で特定の寒天培地条件で10~5cfu/mLの菌量濃度で測定す るが，培地条件ゃ菌量が変われば違った値になる。