日本の絶滅危倶樹木シリーズ--シデコブシ--

摘要

シデコブシ(Magmolia stellata Maxim）は早春に薄紅色の美しい花を咲かせるモクレン属の落葉小高木であり，伊勢湾を取り囲む東海地方（愛知，岐阜，三重）の湿地にのみ分布する。この樹木はコブシに近縁であり，湿地に適応してコブシから分化したと考えられている。シデコブシがみられる湿地の大半は里山にあり，道路建設や湿地開発，貯水池の造成などで減少し続けている。 このためにシデコブシの集団数，個体数も減少し，環境庁版レッドデータブックでは絶滅危惧種（絶滅危惧ⅠⅠ類）に指定されている。 愛知万博の予定地がシデコブシの群生地を保護するために変更されるなど，この樹木は希少植物のなかでも象徴的な存在となっているようにみえるが，保全管理のために必要な生態や遺伝的特性に関わる知見はあまり蓄積されておらず，解明すべき謎が数多く残されている。