富山県西北部におけるアテ林業の歴史

摘要

アテは石川県の代表的造林樹種であり，能登半島を中心に造林されアテ択伐林経営として全国的に知られている。石川県におけるアテ林業の歴史については筆者も触れてきた（6～9）が，アテ林業は石川県だけで営まれてきたとは言い切れないと思われるのである。先の調査（9）で能登中部，南部でも江戸前期から地元のアテが神社や寺院の建築材料に使用されてきたことが明らかになったことから，それらに隣接する富山県西北部でもアテ林業が営まれてきたことが十分考えられることである。これより先筆者は昭和60年頃城端市郊外の屋敷林で胸高直径40cm程度のアテを数本見たことがあり，平成14年には林業新知識1月号で氷見市の篤林家中田市郎氏がアテを育てている記事を目にした。 また，斉藤晃吉金沢大学名誉教授から灘浦地区の調査をしてはどうか，と助言をいただいた。灘満とは富山湾に面した海岸地域で，石川県の七尾市から富山県の氷見市がそれに当たる。 それらのことが動機となって富山県西北部におけるアテ造林の歴史を調査したのである。