名樹鑑賞「黒松銘.黒龍」

摘要

銘樹「黒龍」は、戦前から黒松名木として盆栽界に知られた貴重な樹である。足元から幹中ほどまでにサバ状のシャリが入った樹で、サバ幹の名木と言えば五葉松や蝦夷松などではよく見かけられるが、黒松でこれほどのサバ幹を見所とする樹は非常に珍しい。この黒松が盆栽界で周知されることになったのは、戦前の盆栽大家.田中啓文氏によるところが大きい。昭和M年頃にまだ新木に近い状態だった「黒龍」を入手した田中氏は、入手してほどなく第2回銘風盆栽展(昭和M年)に出品。これが記録として現在に残る「黒龍」の最古の姿であり、おそらく公の場に紹介された初めての展示会であった。