【4】矢掛町のナシ栽培（2）: 田尻敏郎、誠のナシ作り

摘要

昭和42年の秋，矢掛町矢掛の田尻敏郎氏が中心となって，矢掛ナシ部会の会員が広島県世羅町の幸水園に見学に行った。 当時，岡山県農業試験場の果樹部は東岡山の土田に分場として存在し，幸水ナシの若木が1本だけあって，田尻民らはその有望性を感じていた。 当時の会員は12，3名で，岡山県経済連の田辺繁氏も同行した。 世羅の幸永ナシ園は，すでに昭和38年に開園されており，栽培技術の進展はもとより，盆前から主に大阪に出荷される幸水．ナシの人気の強さを聴かされる。 田尻民らは即座に矢掛への導入を決意し，田辺氏に苗木の手配を依頼した。 しかし，岡山県内には幸水の苗はなく，経済連を通じて鳥取に注文したという。 その冬に苗木約100本が到着，し町内の小壕卓志氏が30本余り，田尻寿氏と田尻敏郎氏が20本ずつを引き取り，他にも数本ずつ買い取る人もあった。 ここに，岡山県下初の幸水の経済栽培が始められたのである。