リンゴ生果実内部からの火傷病菌(Erwinia amylovora（BURRILL 1882）WINSLOW et al.，1920）の検出方法

摘要

火傷病菌（(Erwinia amylovora （BURRILL 1882）WINSLOW et al.，1920）は，ナシ，リンゴなどのナシ亜科植物の重要な病原細菌である。 このため，火傷病菌の生態研究あるいは検疫などのためにいくつかの選択培地が開発されている（CROSSE and GOODMAN，1973；ISHIMARU and KLOS，1984；MILLER and SCHROTH，1972；末次ら，1981）。 ROBERTSら（1989）は，アメリカ合衆国ワシントン州産リンゴ生果実の表面および内部における火傷病菌の存在を調査するため，Miller－Schroth 培地（MS培地：MILLER and SCHROTH，1972）あるいはCCT培地（ISHIMARU and KLOS，1984）を用いて検出する方法を考案している。しかし，彼らの報告では，検出感度の評価試験（Determination of assay sensitivities）でリンゴ生果実内部からの火傷病菌の回収率を求めた方法と，1987年および1988年に実際に園地から収穫したリンゴ生果実内部から火傷病菌の検出に用いた方法で，緩衝液，振とう時間，培地などに一貫性がない。 日本産リンゴ生果実（品種：アルプス乙女）を用いてROBERTSらの方法（1989）を一部試みたが，果実表面に生息する細菌の集落が多く形成され，添加した火傷病菌を，MS培地上の集落の性状から識別することは困難で，火傷病菌を高率に回収することはできなかった。このためROBERTSらの方法（1989）を著者らの計画するワシントン州のリンゴ園地における火傷病菌の飛散調査のための当菌検出法に適用することはできないと考えられた。 そこで，著者らはリンゴ生果実の表面および内部からの火傷病菌の検出方法を開発することを目的としてMS培地を改良し，血清反応と組み合わせた検出方法を検討したので，その結果を報告する。