植物における光酸化傷害誘導型生理活性物質の作用機構に関する研究

摘要

光は植物にとって最も重要な環境因子であり，光合成のエネルギー源としてだけでなく，代謝や形態形成さらには運動といった種々の生命現象を制御する環境信号としても働いている。 植物の代謝制御剤である除草剤も光と関連した作用性を示すものが多く知られている。 しかし，除草剤は光と直接に係るのではなく，植物における光で制御される代謝系に作用点を持つことで，光の存在下でその殺草活性が結果的に大きく増強されることになる。 すなわち，光が係る代謝系に除草剤が作用すると，光エネルギーの処理に支障をきたすこととなり，過剰となった光エネルギーに起因した反応で酸素分子が励起や還元を受け，活性酸素分子種の生成が増加する。 この反応性の強い酸素分子が脂質の過酸化を起こして膜を破壊しすみやかな細胞死を引き起こすことが，光照射下での傷害発生の主要因である。 一方で，植物細胞にとっても危険な分子である活性酸素には，細胞傷害の防御応答を誘導するという役割も知られている。