水稲の収量、品質および稲わら飼料に及ぼすオゾンの影響

摘要

地表面オゾン濃度の上昇はさまざまな植物の生産性に影響を与えるが，アジア圏の主要な食糧源である水稲 の収量や品質に対する影響と同時に，家畜の飼料として重要な資源でもある稲わらに対してどのような影響 が想定されるのか，さまざまな品種を対象にしたオゾン曝露実験の結果を中心に考察する。光化学オキシダント（Ox)は有害な ガス状大気汚染物質の一つであり，わ が国の環境基準では1時間値が0.06 ppm (60 ppb)以下であることと規定 されている。光化学オキシダントの主 成分はオゾン（03)であることから， 全国の大気質監視測定局ではオゾン計 で計測したデータを光化学ォキシダン トとして表示している。オゾンは，窒 素酸化物（NOx)や揮発性有機炭化水 素（VOCs)から光化学反応により二次的に生成されることから「二次汚染物 質」ともいわれる。大原、坂田（2003)の報告によると， 1985年度-1999年度の間にォキシダ ント濃度は全国平均で年間0.33 ppb (1.1%/年）の割合で上昇していること が指摘されている。また，欧州で使用 されているオゾンの曝露指標の 一^つ であるAOT40 (1時間値が40 ppbを 超えた部分だけを積算する方法）で日 本全国の日中12時間の平均値を算出 した場合，1980年代の初期から最近 までの間に約0.4 ppmh/年の割合で オゾンの曝露量が増加し，2007年度 には17 ppmhに達する状況になって おり，今後もさらに上昇する傾向が見 られる（図1)。