EU主要国における耕地への家畜ふh尿施与に関する規制の概要

摘要

わが国で家畜ふh尿が環境汚染源として危倶されるようになって久しい。 この危惧を回避するため1999年に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」（家畜排せつ物法と略）が施行され，2004年には罰則を含むすべての規定が適用されている。 この法律の主な目的は，家畜ふh尿の貯留施設などからの養分流出による環境汚染防止であった。 このため，家畜ふh尿の耕地への施与量についての規制は，この法律に盛り込まれていない。 一九わが国の畜産は集約化が著しく進み，単位面積当たりの家畜飼養頭羽数（以下，飼養密度という）が増加したため，家畜ふh尿を耕地に適切に施与するというより，なかば投棄的に耕地へ施与される場合も多い。そのような場合であっても，「家畜排せつ物法」には，耕地へのふh尿施与上限量の規制が設けられていないため，罰則もない。 その結果，耕地に施与（投棄）された家畜ふh尿に由来する環境への悪影響についての懸念は，依然として残されている。それゆえ，わが国において耕地に施与されたふh尿由来の環境汚染防止には，EU諸国において実施されているように，家畜ふh尿の施与上限量を早急に規制対象とする必要があると思う。