日本の農業生態系における機能別ゾーニングの試行

摘要

土地利用の変化は，自然環境の変化を引きおこす最も 大きな要因の一つである（Sala et al．2000；Foley et al．2005，2011）．人間活動によって形成されてきた農業生態系は，土地利用の変化そのものが生態系を形作る主要要因であり，利用形態の変化によって直接的，間接的に生物の生息環境を大きく変える（Osawa et al．2016a，b；Yamaura et al．2009，2012）．定期的な草刈りや野焼き等，伝統的な農業活動によって形成されてきた農業生態系は，多くの生物に生息場を提供し，地域における生物多様性 に貢献してきた（Tscharntke et al．2005；Millennium Ecosystem Assessment 2005；Uematsu et al．2009，2012；Uchida＆Ushimaru 2014；Osawa 2011，2015a）．しかし，機械化や土地集約による大規模イヒなどによって近代化さ れた農業活動は，それまで維持されてきた生物多様性を脅かす重大な要因となっている（Krebsetal．1999；Tilman et al．2001；Uematsu et al．2009，2012；Uchida＆Ushimaru 2014；Osawa et al．2013，2016b）．