吉野川におけるオオヨシノボリ個体群の遺伝的分化および陸封化

摘要

ダムや堰堤などの河川横断構造物は，回遊性魚類をは 　じめとした河川生物の移動障害となっており，構造物上 流側での局所的絶滅や個体数の減少を引き起こすことが 知られている（例えば，福島·亀山2006）．しかし，大 型の貯水ダムでは堰堤が移動障壁となると同時に，その 背後にダム湛水域を創出するため，海を初期成長の場と する両側回遊性魚類では，ダム湛水城を海の代替生息場 所として回遊し，陸封個体群を存続させる場合がある （例えば，ヨシノポリ類：水野1989；Tsunagawa＆Arai 2008；高木ほか2011，2012a）．このような場合，ダム上 流側の陸封個体群では，個体群の縮小や遺伝的多様性の 低下などといった隔離による悪影響が懸念される．