脊髄くも膜下麻酔での帝王切開における急速輸液前負荷の有用性の検討 臍常動脈血pHと乳酸値を指標として

摘要

帝王切開の麻酔法として脊髄くも膜下麻酔が広く行われているが,体血管抵抗の減少による血圧低下が問題となる。 本研究では,血圧低下防止法としての輸液前負荷の有用性を,最低収縮期血圧,エフェドリン投与回数,腰帯動脈血pH,臍帯動脈血乳酸値,アプガー指数の5項目を指標として検討した。 予定手術症例では,急速輸液負荷しない群,酢酸リンゲル急速負荷群, 6%ヒドロキシュチルデンプン急速負荷群の3群間において,いずれの項目にも有意差は認められなかった。 緊急手術群では,予定手術での3群と比較して有意な血圧低下,エフェドリン投与回数の増加,乳酸値の上昇,アプガー指数の低下を認めたが,臍帯動脈血pHには有意差がなかった。 以上の結果から,母体合併症のない予定手術では輸液の種類や急速輸液負荷の有無にかかわらず良好な母体循環管理が可能であるが,遷延分娩などの緊急手術症例では血圧低下予防のために積極的な補液と循環管理が必要であると考えられる。