水素エネルギー社会の実現への展望

摘要

近年，エネルギー源の枯渇化，および環境汚染や地球温暖化をはじめとする地球環境問題の顕在化により，世界的規模でのクリーンなエネルギーの導入が要望されている。このためには，資源的に有限な化石燃料の消費から脱却するとともに，世界的に広くかつ自然界に豊富に賦存する太陽光，風力，地熱，海洋，水力などの再生可能エネルギーの導入を図り，これら自然エネルギーを有効利用することが不可欠である。しかしながら，これらの再生可能エネルギーは，地域的に偏在しており，希薄，間欠であるため，利用するには地理的，量的，時間的に制約される。 また，そのままの状態では長距離輸送·貯蔵が不可能に近いことから，その利用範囲も限られてくる。再生可能エネルギーの一般的な利用法は電気への変換であるが，長距離輸送と貯蔵に難点を有している。 電力貯蔵法である2次電池のエネルギー密度は低く，経済性もよくない。 したがって，豊富な再生可能エネルギーを地球規模で，効率的に利用するためには，世界各地に種々の形態で賦存するエネルギー源から，エネルギーを製造，輸送·貯蔵，利用する段階までを世界的規模で一貫して取り扱える2次エネルギーシステムの確立が必要である。 そのエネルギー変換媒体となりえるものが水素であり，それを生かせるのが水素吸蔵合金である。