食後高血糖の臨床的問題

摘要

食後高血糖の病態生理は,十二指腸から門脈を経て流入したブドウ糖を肝が十分取り込むことができない状況ととらえられよう.肝糖取込み率が低下する理由として, ①流入インスリン量が少ない, ②流入ブドウ糖量が過大,③脂肪肝などの肝の状況,などがあげられる. 2型糖尿病の大半ば"食後血糖値上昇に対応した瞬時のインスリン分泌がみられない,遅延してわずかにインスリン分泌がみられる",というphenotypeを有する.肝はむしろインスリンの働きが亢進しており,血糖応答を正常域に保持している.そこにたとえば過食,飲酒などにより肝細胞脂肪蓄積が起こると,肝での糖処理能が低下し,食後高血糖を呈するようになる.食後高血糖状況を放置すると,インスリン分泌能は急速に低下し,インスリンの働きが悪化し.空腹時血糖値の上昇をもたらす.一方,食後の遅延インスリン分泌が肥満,高脂血症,高血圧などを惹起し,動脈硬化症が発症·進展するが,この状況はmetabolic syndromeとして認められている.肝糖取込み率を高めるために,内因性インスリン分泌を高める,過剰なブドウ糖を一度に肝に流入させない,肝のインスリンの働きを高める薬剤を用いる.などの手法が試みられるべきであろう.