肺高血圧症治療薬

摘要

肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病態生理にかかわる重要な経路として，プロスタザイクリン(PGI2)経路，ェ ンドセリン経路，一酸化窒素（NO)経路が知られている.PAH治療薬はこの10年の間に大きく進歩し，現在 ではPGI2経路の薬剤5種，エンドセリン受容体拮抗薬3種，さらにはNO経路に作用する薬剤としてホスフ才 ジエステラーゼ-5阻害薬2種，および可溶性グァニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬1種の合計11種の薬剤が 使用可能となっている.また，肺高血圧症の原因疾患としてPAHと並hで重要な慢性血栓塞栓性肺高血圧症 (CTEPH)については，最近まで保険適用のある薬剤は存在しなかったが，sGC刺激薬であるリオシグァ卜が 世界ではじめてCTEPHに対して適用のある薬剤として承認された.使用可能な薬剤が増えて治療選択の幅が 広がつた現代においては，これらの薬剤を適切に使い分けるための高い専門的な知識?経験が求められる.本 稿では，各薬剤の特性や至適な使用法について解説する.