角膜パーツ移植

摘要

角膜の機能が損なわれた場合に,これまでは角膜全層を移植する"全層角膜移植"がおもに行われてきた.しかし,近年の角膜バイオロジー,および手術手技の進歩により, "悪い部分のみを移植する",いわば"パーツ別移植"が可能となつてきた.これまでも表層の角膜混濁に対して角膜上皮および実質浅層を移植する"表層角膜移植",輪部機能が悪く上皮障害を繰り返す例に対する"上皮移植"が行われてきたが,これらを一歩進めてDescemet膜のレベルまで実質切除を行う以深層表層角膜移植",および研究室で上皮細胞を培養してシート状にして移植する"培養上皮移植"が臨床に応用されるようになった.これらの術式の導入により手術侵襲や術後合併症の軽減が期待されている.さらに近年,内皮機能不全による水疱性角膜症に射し実質深層と内皮細胞を移植する"内皮移植"も試みられるようになつてきた.まだ術式の完成されていないものも多く,長期間のフォローアップもなされていないが,時代はこれらの"minimum invasive surgeryに向かつていることばまず間違いがない.本稿ではこれらの新しい角膜移植の方法と課題について概述する.