フィンゴリモド(FTY720)の開発と将来展望

摘要

本研究の発端はシィタケの栽培に大きな被害を与えた菌類トリコデルマ属菌(Trichoderma Polysporum)のシイタケ菌成長阻害活性物質の探 索研究からであった。その研究の初期,免疫抑制 剤シクロスポリン(cyclosporin = cyclosporin A . CsA)生産菌の学名は著者らが研究していたもの と同一であった.その後,菌分類学的検討から CsAの生産菌の学名はTolypocladium inflatum に変えられた.そのようなことから,著者は免疫 抑制に関心をもった,一方,著者らの研究してい た菌から,環状のデプシペプチドが単離されてき た.その化合物の多〈は冬虫夏草と類縁の昆虫寄 生菌類が生産していた.昆虫寄生菌の完全世代で あるコルジセブスCordycゆsや不完全世代である ィサリアIsaria属の菌類は昆虫に寄生したとき, ひょっとするとその免疫様機能を低下させている かもしれない,さらに脊椎動物の免疫拒絶反応を抑制する物質を生産しているかもしれない,と予相した.